学生アルバイトオススメ本
第107回 つい他人と自分を比べてしまう人にオススメ
図書館 学生アルバイト 生駒美怜
私のオススメ
『もういちど生まれる』
朝井リョウ著
幻冬舎文庫 2014年4月発行
今回、私が紹介する本は朝井リョウさんの「もういちど生まれる」です。5人の若者を主人公とした短編集なのですが、登場人物がリンクしており、5つの全ての話を読むことで、それぞれの話の主人公や登場人物の内情をより深く理解することができます。ある話では憧れや頼りになる存在として見られている登場人物も、別の話では「こうありたい」「こう見られたい」という理想と、現実の自分の姿にギャップを感じて苦しむ主人公として描かれています。また、自分の可能性を信じられず、何者かになろうと努力する人を小ばかにしている主人公は、別の話では苦悩する主人公の心のよりどころとなっていたりします。この小説は、ある人物が見せている一面がその人の全てではないし、どんなに幸せそうでうまくいってそうでも、人はそれぞれ他人からは見えない痛みを抱えているということを痛感させてくれます。
私たちは常に他人と比較し、比較されながら生きてしまいがちです。あの人は自分と違って才能がある、美人だ、幸せそうだ、頭がいい、人と違ったものをもっている、など他人に対して一方的にコンプレックスを抱いてしまうこともあります。しかし、そうやって羨望をむけられている人たちも、その人なりの苦しみを抱えていて、理想とはかけ離れた自分に失望し、コンプレックスを抱いていたりするものです。それと同時に、ダメだと思っている自分が実は誰かの心の支えになったり、励ます存在だったりすることもあるでしょう。
この小説は必要以上に劣等感を感じる必要はないし、もっとフラットに人と関わってもいいんだと思わせてくれるとても素敵な作品です。
つい人と比較してしまってつらくなってしまう人にぜひ読んでもらいたい一冊です。
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