私のオススメ本

第221回癒しを求めている人にオススメ

おススメ本
 松江キャンパス 図書館職員 廣田 久美

  『とにかく散歩いたしましょう』
  小川 洋子著
  文藝春秋  2015年7月発行

   
 この本はタイトルをみて「そのとおり、鈍っている今の私には散歩が必要」と思い手に取りました。タイトルのもとになった老犬ラブと毎日の散歩や日々感じたこと、人々との関わりなど46篇からなるバラエティ豊かなエピソードが収録されています。そして、どのエピソードにも必ず本が登場します。エピソードを読みながら、様々な本を紹介してもらえるのも本書の魅力です。
 例えば、あるエピソードの中に出てくる『ハダカデバネズミ:女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー)』は、その名のとおり、裸のような出歯のネズミの話。ハダカデバネズミの社会には、ふとん係が存在し、女王に赤ちゃんが生まれたと、新しい命を守るために仲間たちが身体を寄せ合い、文字どおり“肉布団”となって身を捧げるのです。床に寝そべり、身体を丸めて重なり合う姿はどこか滑稽でありながら、その必死さが目に浮かびます。このエッセイを読んでいると、紹介された本も次々と読んでみたくなります。
 さて、本のタイトルにもある『とにかく散歩いたしましょう』もちろんラブとの散歩のことですが、その中にある一文で「ラブは、『ひとまず心配事は脇に置いて、とにかく散歩いたしましょう。散歩が一番です』とでも言うかのように、魅力的な匂いの隠れた茂みを目指してグイとリードを引っ張った」という一文があります。
 私たちは、モヤモヤしたり、どうしようもないことで悩んでいたり、あらぬ心配をしたり、生きていく中で当たり前にそんな場面に遭遇します。そんなとき「とにかく散歩いたしましょう」この言葉は、どんな励ましの言葉よりも思考を切り替えてくれる一言ではないでしょうか。本人は、散歩している場合じゃない、けれどそんなことラブには関係ない。そんなことどうでも良いから、まずは散歩しましょう。私は、犬は飼っていないけど、もし、どうしようもない思考に陥ったら、頭の中でラブが「とにかく散歩いたしましょう」と言うのを思い浮かべ、散歩してみようと思います。
 その他にも心温まる内容が詰まっており、一篇がそれぞれ3~4ページからなるエピソードです。読みやすいのでおススメです。

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